[ ふらくたる -FRACTAL- ExtraEssence! ] - [0120~0106]
晴暦3099年、其者風如のオーレ
晴暦3099年4月9日。

「バベルの筒」を通り抜け、空の上の空へ。

うん、まあ、いろいろあった。

・・・。

まあ、それは置いておいて。

ここは、空の上の空、「樹海雲」。

「樹」で出来上がった「樹の大地」。「空の大地」とも。

・・・。

・・・いる・・・。

・・・。

・・・「あいつ」、・・・ここにいる・・・。

・・・。

・・・変だ・・・。

「あいつの匂い」は感じるけど、なんだこれ・・・。

・・・。

気配3人分一まとめが、なんでこう、うじゃうじゃと・・・。

・・・!

「リンゴ」か!!「リンゴ」の「複写魂の森」か!!

くっ・・・、ぬかった・・・、「あの子」までいるなんて・・・。

あとの禍々しい気配は・・・、「あほの魔王」か・・・。

・・・。

3人揃って、何してやがる。

ハロー!!、リンゴ!!、ニルヴァーナ!!

・・・。

片っ端から潰すしか・・・。

・・・。

「太楽の花見のオーレ」は、道なき道の白き樹海を疾走した。

・・・。

・・・。

「行った?」。

「母さん、怒ってるよ、アレ。」。

「まったく、お前達一家は、わけわからんのう♪」。

「うるさい!アンタは、あの闇の中でうろついてろ!這いずり回ってろ!!不貞腐れてろ!!」。

「きっついなあ♪リンゴちゃんは♪」。

「そだよ、リンゴちゃん。その魔王は、わけわかんないから」。
晴暦3099年、天元宝庫のディストリビュータ
そう。

そうなんだ。

・・・。

知識?

技術?

利用?

応用?

発展?

閃き?

・・・。

希望?

・・・。

望んでも、そうは簡単に手に入らない。

望むからこそ、手に入ることさえある。

・・・。

「あきらめないで。」

・・・。

晴暦3099年4月。

この世界は、「閉じていた」。

そして、

この世界は、「開き始める」。

それは、

「人は再び、世界に手を伸ばし始めた。」

ならば、

ならば、

私は、「送る」としよう。

「拒むのは構わない。」

ならば、

「己自身の手で掴むというのならば。」

「それは、きっと素敵なことだから。」

・・・。

世界の狭間で、天元の宝庫を守主の「ディストリビュータ」は、「可能の扉」を開けた。
晴暦3099年、天元開放のリベレータ
昔々、遥かな昔、

人は空に憧れた。

あの鳥が、あの空を、意のままに流れる姿に。

あの鳥のように、もっと遠くを見渡したい。

あの鳥のように、もっと遠くを望みたい。

そして、「あの兄弟」は、それを実現した。

それは時としては身近なものであったが、

人が大地を離れること、新しい世界を手に入れた、すばらしい瞬間だった。

・・・。

あの鳥は、あの空以上を望まなかった。

人は、あの空以上を望んだ。

それは、空からの痛みを超えて、

かつて、「神の領域」と呼ばれる世界へと飛び出した。

・・・。

「人は世界に手を伸ばし続けた。」

・・・。

晴暦3099年4月。

この世界は、「閉じていた」。

そして、

この世界は、「開き始める」。

それは、

「人は再び、世界に手を伸ばし始めた。」

ならば、

ならば、

私は、「解放」しよう。

「望むものは拒まない。」

ならば、

私は、「解放」しよう。

「望むことは素敵だから。」

・・・。

世界の狭間で、天元を見守る者「リベレータ」は、「扉の鍵」を開けた。
晴暦3099年、紅天笑狐のルイボス
晴暦3099年4月2日。

スーリア国の西の国境のある町「サワ野」。

その日、天を貫く「光の矢」が飛び抜けた。

・・・。

それは、古き忌まわしい妖精の「アーマルタ」の放った光であった。

その光は、白き妖精王を消し飛ばしたと思われる。

「思われる」というのは、「妖精王という存在が異常状態」であったから。

・・・。

世界は静かになり、そして、少しずつ、少しずつ、慌てるかの如く、その報を放ち始めた。

・・・。

「やっちゃった、ね。」

大全太楽のタオは、軽く言った。

・・・。

「ルゥーイィーボォースゥー・・・、あんたはぁ・・・、アホの固まりかあああっ!!」

あたしことウララの従姉妹のグリューロット姐さまが怒鳴った。

・・・。

「しゃーないじゃないのー。あいつ、吹き飛ばすのアレしか思いつかなかったんだし。」

「それにあの妖精王、たぶん、元気だよ。ほんと、たぶん。笑っているの、見えたから。」

・・・。

「ルイボスちゃん。そろそろ、この場から姿を隠したほうがいいよ♪」

「もうすぐ、国連の特研が来ると思うし。あの連中、目の敵にしてるし。」

・・・。

「それじゃ!タオ大叔母様、あとのこと、どうぞよろしくお願いいたします!」

「行くぞ!アーマルタ!」

・・・。

従姉妹のルイボス姐さまと妖精アーマルタが、ふわりと宙に浮かんだ。

ルイボス姐さまの臀部には「九尾」が生えていた。

・・・。

「ドンッ!!」っという衝撃音と輪形に歪んだ空気と共に、二人は姿を消した。

・・・。

晴暦3099年の春。

それは、混乱の刻の始まり。

まあ、昔から混乱の刻はあったのだけどね。

面倒くさい夢が始まると、このわたし、ウララは、なんとなく、そう思うのでした。

・・・。

「グリューロットちゃん達も、早く出発しなさいよ♪」

タオ大叔母様の一言により、

きびきびと動く者と、だらだらと動く者が入り乱れる、

そんな、大全太楽堂サワ野支店の朝でもありました。
晴暦3099年、永劫忘無のエイリアス
晴暦3099年4月。

光が届かぬ闇の森の中には、剣戟の音だけが響いていた。

何と何がぶつかり合っているのか・・・。

・・・。

森の中から、破砕された木々と粉塵が舞い上がった。

それを遥か天空から狙い定めている者がいた。

<そこかぁ・・・>

・・・。

月の輝きの中、その空に漂うものは、ただそこにある風と化していた。

<ナノバイト粒子収束開始・・・>

<照準補正完了・・・>

<投射・・・>

・・・。

風のような「塊」が発せられた。

それは、「妖精を狩る者」に向かって。

音も無く、色も無く、瞬きする間もないくらいに。

<命中・・・>

<?・・・>

・・・。

<命中していない!?>

<何?>

<避けた?>

<ナノマシン・コントロール?>

・・・。

晴暦3099年の春の夜。

涼しくもあり、暖かくもあり。

月の光の中に、その者はいた。

透き通るようで、不定形な感覚。

・・・。

<あれは、聖域を汚す者>

<今しか時がない>

不定形な感覚は、数え切れない無数の殺意を放ち続けた。

・・・。

闇の森は、凄惨なる光景に塗れていた。
晴暦3099年、剣狗のスプリング・ワース
晴暦3099年4月。

闇の森の中には、声なのか、叫びなのか、それすら分からぬものが響いていた。

二つの巨大な影が縺れ合い、命を削る音を立てていた。

・・・。

闇の中から、ビシャ・・・と、色の分からぬものが飛び散っていた。

飛び散ったものは、それぞれが煙を発し跳ねていた。

そして、声にもならぬ声が森の中を付き抜け、静けさが訪れた。

・・・。

何かが来た。

大きい。

差し込んだ月の光が、先ほどの音の元を照らした。

原形をとどめていないドラゴンの骸・・・。

・・・。

<己は、「涙の河」を持つものか>

<己は、ここに来た>

<己は、引き寄せられた>

<己は、我に引き寄せられた>

<我の刃に、引き寄せられた>

・・・。

<己は、妖精を狩る者>

<我は、妖精を護る者>

・・・。

晴暦3099年の春の夜。

涼しくもあり、暖かくもあり。

一筋の月の光はその者の姿を照らした。

巨躯の狗、剣を咥える狗。

・・・。

<学べ、>

<己の力の無さを>

・・・。

「星空のキサラ」は、星を映す刀「涙の河」を引き抜いた。
晴暦3099年、星空涙河のキサラ
晴暦3099年4月。

私は空が暗がりになるのを待った。

いつ起きて、いつ寝ているのかすら、わからない。

・・・。

彼の者は言った。

生物、無生物に関わらず、全てに「存在価値」があると。

知っている者達、出会ったことすら無い者達、全てに対して。

・・・。

彼の者は言った。

何かしらに必要だから、「今、そこにいる」と。

何かしらにも、ほんの一瞬でも忘れ去られたその時に、「今、そこにはいられない」と。

・・・。

そして、

私は、

「今、そこにいる」。

・・・。

空を見上げると、

星の一つ一つが、

「涙の河」に見えることがある。

・・・。

彼の者は言った。

「今、そこにいる」間に、成すべき事は成せと。

・・・。

晴暦3099年の春の夜。

涼しくもあり、暖かくもあり。

・・・。

その手に持つ刀の「星空の涙」は、星空の河を映し出していた。

・・・。

私は、「星空のキサラ」は、「星空に流れる涙」を追って、風のように駆けた。
晴暦3099年、コトコト樹帝のウララ
晴暦3099年4月。

アタシはウララ。

太楽の海花のウララ。

・・・。

アタシは、港町暮らしの箱庭娘。

アタシは、歴史が苦手。

ここ百年、色々あったらしいけど、アタシは・・・知らん!!

・・・。

空には「大きな穴」がある。

なんかおかしくない?

空に「大きな穴」があるんだよ?

・・・。

それは、昔、誰かが「大きな穴」を開けたんだって。

誰なんだろうね・・・。

ま、いっか。

・・・。

アタシは、ちっさい頃、一つの「芽」を見つけました。

透明でキラキラしてて、まるで虹のような、そんな「芽」。

それは、「ゆぐどらしるの芽」だって、婆ちゃんが言ってた。

「芽」は、アタシに「コトコト」と言ったのは憶えている。

・・・。

「コトコト」は大きな樹となり、アタシを見ている。

アタシは、ゆぐどらしるの主の「コトコト樹帝」って言われた。

・・・。

今日は、晴暦3099年の春。

桜の花びらの舞う春。
晴暦3099年、張りぼての星のリアニン
晴暦3099年4月。

・・・。

この地に「エンシェント」が居た事は、それはまた「偶然」。不思議なことではない。

「希望」・「願望」は、何にでも持てる。
「絶望」・「失望」は、何にでも付きまとう。

地の底の「ふらくたる」、「Down-Dead-Deep_Ctrl」。

始まったな。

水、食料、娯楽、それらを得るための「金」。
「金」を得るために働く、戦う。
それは、いつの時代でもそう。
栄誉、名声は、そのあとだ。
そのあとがあるかは知らんがな。

何のために我々は「居た」?
何のために我々は「築いた」?

動く?
動かない?

「奴ら」は来る。確実に。

この「張りぼての世界」に。

そうだ、「始まった」。
いや、「始まった」ではなく「続いていた」のだよ。

我々は、世界を築く「きっかけ」を作っただけだよ。

「歴史の無い大地」に。
「記憶の無い大地」に。

「築いた」のは、その後の者のものだよ。

だが、「終っていなかった」。「始まってすらいなかった」。

この「張りぼての世界」は、もはや「迷宮」。

「世界を活かす糸」は断たれてしまった。
だが、「きっかけ」を作る者も居た。強引な手口だったがな。

ここにはまだ、「望み」がある。「望みの花」が。

「ふらくたる」は、「天」のみじゃない。この「地」にもある。

「Down-Dead-Deep_Ctrl」を始めよう。

この後の「世界のため」に。

この「張りぼての世界」から。

「素肌を晒す道化たちには、血で出来た泥の大地により、刃の吐息と病神の恵みあれ」
晴暦3099年、張りぼての山のディーモン
晴暦3099年4月。

・・・。

瓦礫の山に埋もれて、どれだけ年月が経ったであろう・・・。

瓦礫の山に埋もれて、どれだけ眠っていたであろう・・・。

聞こえる・・・。

聞こえた・・・。

「星の声」が・・・。

「星の歌」が・・・。

瓦礫の山から立ち上がろう・・・。

瓦礫の山から立ち上がろう・・・。

我々は、古の守り人・・・。

我々は、星の守り人・・・。
晴暦3099年、世界樹の妖精のオモチ
晴暦3099年4月。

・・・。

いいのですか?わたしなんかの護衛を任されて?

・・・。

「ああ。これは「依頼」でもあり、「願い」でもあった。」

・・・。

あなたは、「ワルキューレ」なのですよ?

・・・。

「いいさ。すでに、「翼は失った、忘れた」のだから。」

「もう、この「地」に根付いた。」

・・・。

「「妖精王」でも無い、あなたは、古から「世界樹の種」を育む旅に出ておられる。」

・・・。

いいのですよ。わたしには、「それ」しかありません。

・・・。

「あなたがそういうことであれば、間違いないでしょう。」

・・・。

あなたは・・・、どうなのです?

・・・。

「私は、私の出来ることをするだけです。」

・・・。

そうですね・・・。わたしも「出来ること」をするだけです。

・・・。

「世界樹の種」を運ぶ妖精の「オモチ」は、「忘翼の剣聖」と共に旅をした。
晴暦3099年、忘翼の剣聖のグラディウス
晴暦3099年4月。

・・・。

「いいのですか?わたしなんかの護衛を任されて?」

・・・。

ああ。これは「依頼」でもあり、「願い」でもあった。

・・・。

「あなたは、「ワルキューレ」なのですよ?」

・・・。

いいさ。すでに、「翼は失った、忘れた」のだから。

もう、この「地」に根付いた。

・・・。

「妖精王」でも無い、あなたは、古から「世界樹の種」を育む旅に出ておられる。

・・・。

「いいのですよ。わたしには、「それ」しかありません。」

・・・。

あなたがそういうことであれば、間違いないでしょう。

・・・。

「あなたは・・・、どうなのです?」

・・・。

私は、私の出来ることをするだけです。

・・・。

「忘翼の剣聖」と呼ばれたワルキューレの「グラディウス」は、「一人の妖精」と共に旅をした。
晴暦3099年、PMC装備ゴーレムのスカラベ
晴暦3099年4月。

・・・。

PMCメデューサ24の「真紅のフォーミュラのマアカ」はフォワードチームを率いてバベルへ進入した。

・・・。

フォワードチームは、湧き出るように現れる「タイプ:エンジニアリングドラゴン・コンセプト:バルブ8」の追尾が行えない程度に斬り付けて進行した。

・・・。

それでも、「バルブ8」は、自己修復機能により再稼動を試みていた。

・・・。

サポートチームは、その状況を即時把握し、

「ジュエルポッド」を次々とバベル上層部に向けて射出した。

・・・。

「ジュエルポッド」は、障害対象を認識し、カウルを剥離させ、内部から無数の球状物体を放出した。

無数の球状物体は、PMC装備殲滅用ゴーレムの「スカラベ」であった。

サイズは、1cmにも満たない。

それらは、三角錐頂点に設けられたポートから、極細フレシキブルアームを展開し、わらわらと「バルブ8」達に群がった。

フレシキブルアームの先端は、注射針になって「バルブ8」の外皮に突き刺し、「液状爆薬」を注入した。

注入後の液状爆薬には、カメラセンサーを兼務しているレーザービーマーで次々と点火させ、外皮に爆発痕を付けていった。

その爆発痕から「スカラベ」自身が侵入し、高速不規則回転によりフレキシブルアームで内部を傷つけ、

「バルブ8」内で「自爆」した。

・・・。

「バルブ8」は、自己修復機能が追いつかないまま、バベル最下部まで落下した。

・・・。

「バルブ8」達は、その後、バックアップチームによって「コア」を破壊され、機能停止していった。
晴暦3099年、冥界の妖精王のアヴァロン
晴暦3099年4月。

・・・。

<来るか・・・。>

・・・。

<来るのか・・・。>

・・・。

<来るのか・・・「エンシェント」の子飼いの者どもよ。>

・・・。

<「宴」だ・・・。>

・・・。

<「宴」の始まりだ・・・。>

・・・。

<「エクストラ・クライシス」・・・。>

・・・。

<「エクストラ・クライシス」の始まりだ・・・。>

・・・。

宙界監視軌道衛星「エンジェル・コースト」。

・・・。

冥界の妖精王の「アヴァロン」は、「宴の始まり」を響かせた。
晴暦3099年、真紅のフォーミュラのマアカ
晴暦3099年4月。

・・・。

バベル・・・。

・・・。

サーチドローン、射出。

「サーチドローンA、1・2・3、ノーマル」

「サーチドローンB、1・2・3、ノーマル」

・・・。

蒼のフォーミュラは、「天隔壁」間際か。

「サーチ完了」

・・・。

「タイプ:エンジニアリングドラゴン・コンセプト:バルブ8、56機確認」

「タイプ:エンジニアリングドラゴン・コンセプト:バルブ16、12機確認」

結構残っていたものだな・・・。

「バベル上層部にて、衝撃音確認。蒼のフォーミュラによる戦闘を確認」

・・・。

これより、メデューサ24は状況を開始。

バックアップは、フォワードによる半壊対象物を完全に破壊。

サポートは、バベル中枢へと「スカラベ」を適時射出。

フォワードは、蒼のフォーミュラを追跡。

状況を開始せよ。

・・・。

PMCメデューサ24の「真紅のフォーミュラのマアカ」はフォワードチームを率いてバベルへ進入した。

・・・。

このメデューサの「眼」で、「蒼」を焼ききれるか?