[ ふらくたる -FRACTAL- DripDrops! ] - [0390~0376]
晴暦3007年、覇王激姫のユナ
晴暦3007年5月14日。

ここは北リアニン大陸最北端の王立国家「シーバウス」の「将軍」岬。

北海を挟んだ対岸の彼方には、北の極地の大国「クリスタルズ」がある。

・・・。

「将軍」岬が若干慌しくなっていた。

先んじて、シーバウスの軍師「フラン・シー・ド」率いる「黒い賢者師団」が「クリスタルズ」に進撃を行ったのだった。

・・・。

来たか。

・・・ブオオオオン!!・・・バルバルバルバル!!

二人乗りの一台の小型バイクがユナ姫の前に着いた。

・・・。

「あなたが、シーバウスのユナ姫?」、バイクを運転してきた「緑の服装の少女」が言った。

そうだ。

「あなたは・・・、昔見た。5年前と、あまり姿が変わらない・・・。「眷属」?」

わかるのか?

「あなたの姿、昔、太楽本家で見た。」

そうか、お前がモカ総帥の養子か。

「そう、大婆ちゃんの養子。」

昔は、我が軍が大層迷惑をかけた。

今も、我が軍が迷惑をかけている。。

お前達には、申し訳ないが、再度、手を貸して欲しい。

「アタシは・・・、アイツらを・・・、迎えに行く!!」

「あたしも、迎えに行くの!!」、バイクの後ろに乗ってた、「ピンクの服装の少女」も言った。

そうか。大事な人なんだな・・・。

ボートにバイクを載せろ。

・・・。

「ユナ・メータ・シーバウス隊はこれより出撃する!!」

・・・。

ユナ・メータ・シーバウス。北端の王立国家シーバウスの第三王女。

「緑の服装の少女」が言った通り、ユナ姫は、人に近い「魔王の眷属」だった。

・・・。

で、どうして遅くなった?

「道に・・・、迷った・・・」
晴暦3007年、風の導き手のミロン
晴暦3007年5月14日。

ここは北リアニン大陸最北端の王立国家「シーバウス」の「将軍」岬。

北海を挟んだ対岸の彼方には、北の極地の大国「クリスタルズ」がある。

・・・。

「将軍」岬が若干慌しくなっていた。

先んじて、シーバウスの軍師「フラン・シー・ド」率いる「黒い賢者師団」が「クリスタルズ」に進撃を行ったのだった。

・・・。

遅いな・・・。

・・・ばさっばさっ・・・。

「やあ、シーバウスのユナ第三姫君。」

貴様が来るとは思わなかったが。

「まあ、いいじゃないか。」

で、どうなんだ?

「ああ、もうすぐ来るよ。ここに来るとき、ちょうど真下に見えた。」

そうか。

「太楽の依頼かな?」

そうだ。昔、太楽に借りがある。

「そう、借りを返す事は大事よね。」

「地龍の心の臓」が無ければ、シーバウスは、飢餓の危機にあった。

化石でもよかった。

それを、「金銭取引」という形で譲渡してくれた。

シーバウスの「地」に命が吹き返し、多くの民が助かった。

危うく、あやつ、「フラン卿」の手により「龍狩り」が行われずに済んだ。

「龍狩りはいけないなあ。どんな形であれ。」

ああ。だから感謝している。

・・・。

「グレムリンズ」!!、「オルト」のエンジンをかけろ。

・・・。

「グギギギギギ。」

・・・。

4匹の怪妖精で編成された「グレムリンズ」は、二足歩行戦車「オルト」のエンジンを始動させた。

・・・。

「あの子ら、来たみたいだね。」

ああ。厄介だが、自らを危地に投じる勇敢なる者たちだ。

「じゃあ、怪我しないよう、程度を見極めて帰ってきなさい。」

・・・。

風見鶏の魔女のハーピィ「ミロン」は、ふわりと飛び上がり、冷たい風吹く丘の上に舞い降りた。

・・・。

「勝利の風よりも、幸せの風が吹きますように。」
晴暦3007年、嵐の英傑のアリィー
晴暦3007年5月14日。

・・・。

<ねえ?アンタはどうしたい?>

あんたなら出来る?。

<この僕に何をして欲しい?>

同族殺し。

<同族殺し?>

そう、同族。

<誰が、同属なんだい?>

あの、うっとおしい悪魔の「虚無」。

<ああ、「虚無」か・・・知らないなあ♪>

そう、その「虚無」。

<ああ、「虚無」の「存在」は知っているよ♪>

「存在」・・・だけねえ・・・。

<「あれ」は、「有」と「無」の判別が難しいわ♪>

「居て」、「居ない」、そんな感じだった。「弱点」って無いの?

<「弱点」・・・知らないなあ♪>

知らない・・・ねえ・・・。

<だって、・・・「終らない」んだから♪>

「終らない」・・・?

<「虚無」って、知ってる?>

なんとなくね・・・。

<何にでも、何処にでも、「存在」し、「存在」しない♪>

・・・。

<まあ、やってやるさ♪>

・・・。

<魔女の「アリィー」殿♪>

・・・。

憂鬱の悪魔の「デプレシオン」は、憂鬱らしさを見せず、とても楽しそうだった。

・・・。

そう、「面倒」なんだよ。あの「虚無」は♪

<「面倒」・・・ねえ♪>

かつて、数度の機会があった「ドット・ウィッチ・プロジェクト」の影に気配があった。

なぜか「失敗」する。

あいつの「気配」があったかもしれない。

そう、「アイツの気配」もあったかも・・・。

憎ったらしい、あの「天ノ原のアリス」のね♪

・・・。

嵐の魔女「アリィー」、嵐の英傑の「天ノ河のアリィー」は、何かを考えていた。

その考えに、笑みが浮かんでいた。
晴暦3007年、憂鬱の悪魔のデプレシオン
晴暦3007年5月14日。

・・・。

<ねえ?アンタはどうしたい?>

・・・。

<この僕に何をして欲しい?>

・・・。

<同族殺し?>

・・・。

<誰が、同属なんだい?>

・・・。

<ああ、「虚無」か・・・知らないなあ♪>

・・・。

<ああ、「虚無」の「存在」は知っているよ♪>

・・・。

<「あれ」は、「有」と「無」の判別が難しいわ♪>

・・・。

<「弱点」・・・知らないなあ♪>

・・・。

<だって、・・・「終らない」んだから♪>

・・・。

<「虚無」って、知ってる?>

・・・。

<何にでも、何処にでも、「存在」し、「存在」しない♪>

・・・。

<まあ、やってやるさ♪>

・・・。

<魔女の「アリィー」殿♪>

・・・。

憂鬱の悪魔の「デプレシオン」は、憂鬱らしさを見せず、とても楽しそうだった。

・・・。

「そう、「面倒」なんだよ。あの「虚無」は♪」、魔女アリィーはつぶやいた。

・・・。

<「面倒」・・・ねえ♪>
晴暦3007年、荒れる微風のナミカゼ
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」の対岸の王立国家「アルテネ」。

アルテネは合衆国であり、南リアニン屈指の広さの国土を誇る。

・・・。

ふぅ・・・。

トト様は、まだ帰ってこられていなかった・・・。

打ち合わせの日くらい、思い出して、トト様。

・・・?

「おや?ナミカゼ殿ではないか♪」、ベルタ様は私を見つけられた。

嫌な予感が・・・する。

・・・。

「ナミカゼ殿♪・・・行かないか?」、ベルタ様は何かを言った。

私の耳には、私の身によくない事は聞こえないような能力がある。

良いそよ風ですね、ベルタ様。

・・・。

「ナミカゼ殿♪・・・行かないか?」、ベルタ様は何かを言った。

そよ風が・・・吹いた。

・・・。

ベルタ様は、にこにこしながら、近づいてきた。

やばい!笑顔の裏に怪しい気配を感じる!

耳元で、・・・、

「ねえ♪ナミカゼ殿♪「フォックニウス」に行かないか?」、ベルタ様は、ニヤニヤしながら言った。

うあああ!!うおおお!!あれでしょ!!あの報道されていた、「南洋ミラーズ」のフォックニウス侵攻作戦のことでしょ!!

聞きたくなかった!!

聞きたくなかったでござる!!

・・・。

べ、べるたさま♪、私は、トト様との打ち合わせに来ただけですよ♪

(やばい!やばい!やばーーーいっ!!なんとか、切り抜けなきゃ!!)

・・・。

「大丈夫♪モカ殿には了承済み♪」、ベルタ様は答えた。

うぎゃあああーーー!!

・・・。

大全太楽堂アルテネ御崎支店から、何気ない打ち合わせに来ていた私は、絶叫してしまった!!

私は、太楽の術帝のナミカゼ。私は、ただの営業、非戦闘員!!が、モカ大婆から「二つ名」を付けられてしまった!!

・・・。

嫌ですよ!!嫌です!!フォックニウスには関わるなと、実家のばっちゃに昔から言われております!!

「あなたの「営業力」が、今、欲しいの♪」、ベルタ様は言った。

・・・。

「そうや♪一緒に行こうや♪南極に一緒に行こうや♪」、剣聖メリディエスは、背後からそっと、囁いた。

メリディエスには言われたくないわっ!!

・・・。

私、ナミカゼは、メリディエスに引きつられて、暗黒世界へ・・・。
晴暦3007年、南の剣聖のメリディエス
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」の対岸の王立国家「アルテネ」。

アルテネは合衆国であり、南リアニン屈指の広さの国土を誇る。

・・・。

ねえ、賢者殿、賢者殿。

「なんです?メリディエス殿?」、賢者殿と呼ばれた者、賢人「ベルタ」は答えた。

何ゆえに、私が選ばれたん?

・・・。

「え~、それは~、あなたが~、「剣聖」だからです。」、ベルタは答えた。

・・・。

「剣聖」って、「宮使い」だったっけ?

「この国の「剣聖」で、暇そうな方はあなただけです。」、ベルタは答えた。

・・・。

なんか、すっごい、複雑な気分なんやけど。

「はいはい、「剣聖」殿は、この国では希少な存在なのです。」、ベルタは答えた。

私って・・・、「希少」?「希少」?

・・・。

「そうです、「希少」な存在です。」、ベルタは答えた。

・・・。

「私に古き友人から、助けの連絡が来ました。」、ベルタは答えた。

「助け」?、あの今さっき報道されていた、「南洋ミラーズ」のフォックニウス侵攻作戦のことだっけ?

・・・。

「そうです。そこにも、私の古き大事な友人がいるのです。」、ベルタは答えた。

で、「暇そうな希少な存在の私」に出番だと・・・?

・・・。

「そうです。行きなさい。今すぐ準備して、行きなさい。」、ベルタは答えた。

ぶーーー!!

・・・。

アルテネの「希少な暇人の剣聖」の「メリディエス」は、ぶつぶつと不貞腐れながら準備していた。

・・・。

フォックニウスって南極やろ?

私、寒いの苦手やねん。

・・・。

「大丈夫。行けばわかります。行けばわかります。」、ベルタは答えた。
晴暦3007年、焔の中のクラッカー
晴暦3007年5月10日正午、天候曇り。

箱舟「ウェブスィーパー」は、混乱の塔「バベル」に船首攻撃を行った。

西リアニン大陸のイルタリアから発せられた衝撃波は、どこかの宇宙の一つの惑星「リアニン」全土に響き渡った。

・・・。

「バベル」周辺には、エンジニアリングドラゴン「ディバイド」により、破壊された空中戦艦の黒い爆煙が渦巻いていた。

「ディバイド」の「光の散弾」攻撃により、空中戦艦艦隊は壊滅。

空中戦艦の乗員が「バベル」に逃げ込めたかすら、わからないような状況であった。

燃え盛る高熱と有毒ガスの中に、赤い人影が見下ろしていた。

・・・。

「天劇の王」、このバベルを伝って、再度、樹海雲へ、「ふらくたる」に行きなさい。

「小さな赤い光」がバベルの中を、瞬く間に上昇していった。

・・・。

「タングラム」、必要か、不必要か、を見定めましょう。

赤い人影は、バベル内部にて発せられている戦闘の衝撃音の方向に、空中を歩みだした。

・・・。

魔女「クラッカー」は、「タングラム」という「世界のパズル」を組み直す為に、参じたのであった。
晴暦3007年、天断つ竜のディバイド
晴暦3007年5月10日正午、天候曇り。

箱舟「ウェブスィーパー」は、混乱の塔「バベル」に船首攻撃を行った。

西リアニン大陸のイルタリアから発せられた衝撃波は、どこかの宇宙の一つの惑星「リアニン」全土に響き渡った。

・・・。

「バベル」内部は、戦場状態に至った。

「誰が、誰と、戦っているのか?」、それすらも把握すら出来ない状態だった。

・・・。

バベルの外は、雨が降り始めていた。

雨霧の中、「バベル」に近づく者達がいた。

それは、先刻、「黄昏の姫君」により破壊された、北西の王立国家「オーレウス」の空中戦艦「ブルトラ」級の艦隊だった。

それは、「バベル」に接舷しようとしていたのであった。

・・・。

後続のブルトラ級が接近してきた。

火災煙が、もうもうと立ち上がっていた。

あと、僅かな距離で、火の粉と破片を散らし、爆砕した。

・・・。

「何処から攻撃を受けたっ!?」、すでに接舷している艦の指揮官が確認指示を出した。

・・・。

「レーダーにも、敵味方識別信号にも反応ありません!!」、

「いや、映像記録に「影」を確認!!、これは・・・、「竜」です!!」、観測班が答えた。

・・・。

「種別はわかるか!?」

・・・。

「即座に、光学迷彩を展開した模様!!」

「形状識別確認!!タイプ:エンジニアリングドラゴン・コンセプト:ディバイド」です!!」

・・・。

「総員!!目標建造物内部へ退避!!」、司令官は慌てた。

・・・。

空戦に特化したエンジニアリングドラゴンの「ディバイド」が、艦橋の前で姿を現し、「光の散弾」を撒き散らした。

司令官は、あきらめのため息を吐き、眼を閉じた。

・・・。

接舷途中の「ブルトラ」級は、次々と爆散していった。
晴暦3007年、新生の悪魔のヌーヴォ
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」。

北の極地の大陸「クリスタルズ」とは、また違う世界。

・・・。

ねえ、「ウトピア」。

「彼の者達」は、ここに来るのかな?

・・・。

<来るさ♪>

<そして、「真実」を知るさ♪>

・・・。

「真実」を知って、どうするんだろう・・・?

「真実」を知って、どうなるんだろう・・・?

・・・。

<それは、「人」、それぞれ♪>

<なにも、「新生」のお前が悩むことではないさ♪>

<そのとき、わかる。>

<そのとき、わかるものさ♪>

・・・。

新生と呼ばれた悪魔「ヌーヴォ」は、世界樹を見上げた。

・・・。

「フォックニウス」、「世界」は、きっと変わるよ。

「フォックニウス」、「世界」は、きっと生まれ変わるよ。
晴暦3007年、理想郷の悪魔のウトピア
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」。

北の極地の大陸「クリスタルズ」とは、また違う世界。

・・・。

彼の者たちは、何を求めて、ここに来ようとするのか。

まあ、それは大体わかるけれどね。

・・・。

ねえ、

ここは、極地だから、寒い土地と思う?

・・・。

それは、

「南極点」に来てからのお楽しみ♪

これは、きっと、予想外♪

それは、必ず、予想外♪

・・・。

さあ、攻め立てる者たちは、試練を乗り越えて来て見なさい♪

・・・。

世界は、「広く」、「優しい」、簡単なことだから♪

・・・。

理想郷と呼ばれた悪魔「ウトピア」は、世界樹を見上げた。

・・・。

「フォックニウス」、「世界」は、きっと変わるよ。

「フォックニウス」、「世界」は、必ず変わるよ。
晴暦3007年、麗海のラフィン
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」の対岸。リアニン中央大陸の最南端。

北リアニン半球をコングロマリットカンパニー「大全太楽堂本舗」あり。

南リアニン半球をコングロマリットカンパニー「南洋ミラーズ」あり。

・・・。

対岸の氷で埋め尽くされた南の極地大陸「フォックニウス」は、赤く燃え上がっていた。

衛星軌道上にある妖精「サピヲ」による光粒子砲撃で、フォックニウスの黒きゴーレムの群が燃えていた。

それでも、黒きゴーレムの数はさほど減っていない。

・・・。

よくもまあ、溢れんばかりに湧いてくるものだ。

しかし、大分、見晴らしもよくなった。

世界樹の「フォックニウス」が、よく見える。

ははっ♪

世界樹「フォックニウス」と、古の悪魔「エッジ」が見える。

なんとまあ、焦りもしないで淡々と思考会話をしている。

まあ、予想はつくがな。

・・・。

南洋ミラーズ軍事部門「ランフーン」の陣頭指揮をしていた「ラフィン・ミラーズ」に、対岸から黒き群が押し寄せてきた。

・・・。

黒き群は、フォックニウスのガーディアンの黒きゴーレムの群。

「ランフーン」を物量差で、一網打尽にするつもりだったのであろう。

だが・・・。

黒き群は、「ラフィン」に接触する手前で、次々と爆砕して粉塵と化した。

・・・。

「ランフーン」は、これより「フォックニウス」に進撃をする。

「ランフーン」は、これより「フォックニウス」に進撃をする。

・・・。

「ラフィン」率いる「ランフーン」は、エアクラフト洋上機で進撃を開始した。

「魔族」の統治する南極大陸「フォックニウス」へ。

・・・。

「「彼の空」は、この麗海のラフィンに返してもらうぞ。」、ラフィンは、にやりとつぶやいた。
晴暦3007年、端の悪魔のエッジ
晴暦3007年5月15日。

ここは南の極地の大陸「フォックニウス」。

・・・。

<貴殿は、何故ここにいる?>

必要とされているから。

・・・。

<貴殿は、いつからここにいる?>

あなたと共にあり。

・・・。

<貴殿は、何故ここから離れない?>

行く所が無い。

・・・。

<貴殿は、意思はあるのか?>

思う所なし。

・・・。

<貴殿は、この問答はどう思うのか?>

飽きさせない良いことだと思う。

・・・。

<貴殿は、何故、「魔族」か?>

「魔族」とは、「人」が、そうで思ったからであろう。

・・・。

<貴殿は、「彼の者達」がここに来ると思うか?>

それは誰にもわからない。時が来れば、きっと、わかる。

・・・。

端の悪魔「エッジ」は、世界樹「フォックニウス」と、延々と問答していた。
晴暦3007年、永遠の妖精のエテルニタ
晴暦3007年5月15日。

ここは北の極地の大国「クリスタルズ」の大雪原。

・・・。

<異の者、現りて。>

誰・・・?

機能を停止したゴーレム「ダイアモンド・ダスト」の足元の影が伸び広がった。

「それ」は影から、ゆっくりと姿を現した。

「それ」は、人の数倍の大きさを誇りながら、悠然と宙に浮かんで見下ろしていた。

<異の者、それは悪魔。>

<異の者、それは魔女。>

<異の者、それは魔王の眷属。>

・・・。

<そうか、異の者は、定刻どおり、この地に現れたか。>

・・・。

「エテルニタが、なぜ、ここに!?」、オーロラは問いただした。

・・・。

<煌めく者、オーロラよ。この地から直ちに離れよ。>

・・・。

「あなたは、魔王の眷属ね。」、オーレは、寒さを忘れたかのように問いただした。

・・・。

「あなたの主は誰?魔王?魔王の眷属?」、オーレは、さらに、問いただした。

・・・。

<我は、異の者、排除する也。>

・・・。

「エテルニタ」と呼ばれた巨大な妖精は、オーレ達三人、悪魔「虚無」に立ちはだかった。

「この地には魔王の類がいる・・・。」、オーレの読みは間違っていなかった。
晴暦3007年、終焉無き悪魔の虚無
晴暦3007年5月15日。

・・・。

<♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

 <♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

<<虚ろなる心無し、闇すら敵わぬ無の井戸ありけり・・・>>

<♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

 <♪ディラディラディラディラ、ディラディラディラディラ♪ルーーーーーー♪>

<我は一つ・・・>

 <我は無限・・・>

<ここに、我ありけり・・・>

・・・。

<我に立ち向かう者ありけり・・・>

 <我に立ち阻む者ありけり・・・>

<我に屈する者ありけり・・・>

 <我を伏せる者ありけり・・・>

・・・。

<我は無であり、我は限りなき者でありけり・・・>

・・・。

<無の井戸から溢れる「虚ろ」、数え切れぬものでありけり・・・>

 <「人」よ・・・>

<「敵」は「我」なり・・・>

 <「敵」は「我」なり・・・>

・・・。

<ヤンヤディラの歌を響かせよう・・・>

 <ヤンヤディラの歌を響かせよう・・・>
晴暦3007年、カローザは、剣と盾と成り
晴暦3007年5月15日。

ここは北の極地の大国「クリスタルズ」の湾。

クリスタルズは外界、諸外国とは隔絶さえている。鎖国である

・・・。

無双の剣豪、王立国家シーバウスの戦歌姫カローザ・シー・ファ。

「ファンデメルヴェだけではないはず。」

カローザは、大剣「バンカー・バスター」を練成し、身構えた。

「来る。」

・・・。

<♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

 <♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

<<虚ろなる心無し、闇すら敵わぬ無の井戸ありけり・・・>>

<♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪ヤンヤディラ♪>

 <♪ディラディラディラディラ、ディラディラディラディラ♪ルーーーーーー♪>

<我は一つ・・・>

 <我は無限・・・>

<ここに、我ありけり・・・>

・・・。

「人非ず者。」

「この世の括りに囚われない者。」

・・・。

「無の者。」

「虚無。」

・・・。

悪魔「虚無」は咆哮をあげた。

・・・。

「我は盾と成り、剣と成ろう。」

・・・。

カローザは、鈍重な大剣「バンカー・バスター」を、軽々と片手で持ち、

地を這うように、悪魔「虚無」へと向かった。

・・・。

数秒も掛からず、鈍い音が鳴り響き、悪魔「虚無」の絶叫が響いた。

カローザは、剣聖の奥義「一分間戦争」を行ったのであった。